089-927-9402
(書写書道研究室)9:00~17:00(平日のみ)

愛媛の書


「花意竹情」

愛媛の書文化は、歴史的に突出したものがあるわけではありませんが、全国的に著名な僧 明月が活動した地域であり、日下伯巌など、まだまだ掘り起こすべき書家は多く、全国を視野に入れた位置づけが求められています。近年は、三輪田米山が「近代書の先駆け」として脚光を浴び、高校書道教科書にも作品が掲載され、県内はもとより、大阪市、成田市、名古屋市など県外での展覧会が開催されるなど、全国的に評価が高まっています。米山の代表的研究書『米山 人と書』は、浅海蘇山氏(故人 名誉教授・教育学部)の研究成果であり、最重要の基礎研究文献と評価されています。愛媛大学図書館には、歴史史料としても重要な『米山日記』や作品が多数収蔵されており、愛大ミュージアム開館以来の「米山展」開催も含め、米山なら愛媛大学と「米山のメッカ」を目指しております。

愛媛ゆかりの書人には以下のような人をあげることができます。

  • 日下伯厳(1785-1866)
  • 三輪田米山(1821-1907)
  • 村上壷天子(1887-1984)
  • 松本芳翠(1893-1971)
  • 片山萬年(1895-1971)
  • 三宅武夫(1903-1990)
  • 浅海蘇山(1911-1992)
  • 村上三島(1912-2005)
  • 沢田大暁(1915-2005)

河東碧梧桐

センターでは、愛媛出身、あるいは愛媛に資料が残されている書作家の調査・研究を行っています。その代表的な一人に河東碧梧桐がいます。河東碧梧桐の書は現代の人間が見ても個性的なものであり、生涯の書作を一期から四期に分けることができるとされています。その書は特徴的ではありますが、全く類例がないものではありません。中村不折という画家であり、東京根岸に書道博物館を開いた人物の影響があり、その不折も、中国の漢時代から六朝時代の石刻の影響を受けていると言われています。
このように、一人の書作には多くの繋がりを持ちながら個性的な表現が生まれる事があります。愛媛大学ではこのような繋がりをひもときながら、新しい視点で書作品を紹介します。


「集籍散書」

碧梧桐の第三期の作品です。第三期の作品は漢代の隷書作品の影響を受けているとされています。筆の先を線の中に込める「蔵鋒」という筆法を用い、肉厚の線で描いています。その線質を用いながら、独自の文字構で作品を作り上げています。元々の横長の作品を右から書くことは、縦書きの手法であり、中国の作例に多く見られます。


延年益壽


「こずゑの花日全くくるゝ梅」

中国古代の代表的な文字資料に「瓦当」と言われるものがあります。家屋の屋根瓦の先頭の装飾のために作られたもので、中国の後漢時代のものが代表的であると言われます。瓦当のデザインは文字をゆがめて円形の空間にまとめています。碧梧桐の作品には文字の高さを意識的に変えたり空間をゆがめて書くことがありますが、文字を自由に配置できることも、中国の古典作品から学んだと思われます。


箱書き

作品を軸装した箱に4名の作家がサインをしたものです。碧梧桐、為山、虚子ら愛媛出身の俳人の横に中村不折の名が見られますが、不折は画家でありながら、積極的に日本や中国の書道資料を蒐集し、書道博物館を作りました。この時代に碧梧桐の書と共通性が見られるのは唯一中村不折だけと言えます。