秋山 敏行(AKIYAMA Toshiyuki)
専門:美術科教育
研究内容
「子ども一人一人で異なる表現の論理について」「〈造形遊び〉をはじめとした図工・美術の〝学び=遊び=楽しい〟の仕組みとそれを保障するための教師の振る舞いについて研究しています。
◉ 子どもの造形的な活動の相互行為分析による臨床的研究のための基礎的考察〜小・中学校と大学研究チームの相互連携プログラムの構想のために〜(2015) 【abstract】学校という制度の中で「子どもの造形的な活動の論理と展開」を保障するにはどのようにすればよいかについて考察したものである。教師を取り巻く環境により子どもたちに対する思い込みや決めつけが支配しがちであるという筆者自身による中学校での授業実践等に係る省察を踏まえ、子ども一人一人で異なる「子どもの造形的な活動の論理と展開」をとらえ保障していくためには、そうした態度をやめ、子ども一人一人の生きる現在にかかわり合うことのできる柔らかな身体—身体性—を取り戻す必要があるとして、主として記号論や現象学等の知見を援用しながら相互行為分析のトランスクリプトという視点を一つの手がかりに、筆者と教師がともに身体性を働かせることでひらく間主観的なかかわり合いのあいだに「還元(思い込みや決めつけを排していく)」のためのルートをつくりだし—教師が一人で「還元」に取り組むのは難しい—、そこから必要とされる具体的なかかわり合い—「子どもの造形的な活動の論理と展開」を保障するための支援のかたち—について、今度はそこにかかわる教師自身が考え、自ら実践していくことが必要であると結論づけた。もちろんこのとき、筆者自身の「還元」の質、筆者と教師のあいだの「間主観的」なかかわり合いの質に留意するとともに、小・中学校との具体的な連携のありようについて検討していくことも不可欠な要件である。……『美術教育学研究(大学美術教育学会誌)第47号』(pp.7〜14)より
◉ 子どもの造形的な活動の相互行為分析による臨床的研究のための基礎的考察Ⅱ〜愛媛県松山市の小学校における〈造形遊び〉の授業提案、および同市内の小学校を対象とした〈造形遊び〉に関するアンケートの分析をもとに〜(2016) 【abstract】学校という制度の中で「子ども一人一人の造形的な活動の論理と展開」を保障するための方法と態度について探求するものである。このため本稿では第一に松山市立A小学校1学年を対象として実施した「造形遊び」の授業提案に係る観察や諸データの分析・考察を通して、筆者自身の間主観的な「感じ」がその「還元」において重要な契機となり得たこと、トランスクリプト類やビデオ記録、ワークシートを相互参照することの有効性やワークシートの意義を再確認できたこと、後日のアンケートやインタビューも含め今回の一連の提案が担任の教師の「身体を解す=還元する」契機となり得たことといった成果を得ることができた。課題としては授業提案における検討会の充実と各種リソースを相互補完的に用いた有効な分析・考察を探求していくことがあげられた。第二に愛媛県松山市内の小学校全55校を対象として実施した「造形遊び」に関するアンケートの分析・考察を通して、「造形遊び」に対する取組の現状をとらえ、今後の支援の方向性を探っていく端緒を得ることができた。このことにより、松山市内の大多数の小学校教師がもつ「造形遊び」に対する思いやその背景等について具体的な数値をもとに把握することができたこと、それらと先のA小学校での実践における成果と課題との関係から今後の具体的な支援の方向性を見出すことができた点があげられる。課題としては上記成果をふまえて協力校を絞り込み、「評価」や「指導法」といった諸々の問題群へも臨床的な論究を試みつつ今後の相互連携体制の具体的なありようについて検討をすすめるとともに、その実現に向けた取組を模索していくことがあげられる。……『美術教育学研究(大学美術教育学会誌)第48号』(pp.9〜16)より
◉ 子どもの造形的な活動の相互行為分析による臨床的研究のための基礎的考察Ⅲ〜「造形遊び」の授業研究等を通した「還元」に係るプロセスモデルの構築とその可能性について〜(2017) 【abstract】前稿に引き続き、学校という制度の中で「子ども一人一人の造形的な活動の論理と展開」を保障するための方法と態度について探求するものである。このため本稿では、前稿までの標記論考Ⅰ〜Ⅱで言及した「子どもの生きる現在にかかわる研究者と教師のとり得る方法と態度」のありように係る考察をふまえ、そこで「仮説」として示していた研究者と教師の「還元」に必要と思われるプロセスを、新たに「プロセスモデル」として提案し直し、愛媛県松山市立内の小学校において実施した「造形遊び」の授業研究に協力いただいた当該学級の担任を対象に、当時の言動や振る舞いについてインタビューを実施した上で、その分析・考察に対して上記「プロセスモデル」を援用することにより、当該モデルの有用性に関する検討を行った。その成り立ちや性格を本研究の方針に照らしてみた場合、仮説ではなく「モデル」というかたちがより適ったものであると考えられたためである。この結果、提案の「プロセスモデル」により、「還元」に係る研究者によるインタビューの方法および態度をはじめ、それを受けての先生方の反省的な回答内容、そしてさらにそれを受けての研究者による質問ないしコメント…というサイクルについて、ひとまずはモデル化することができたといえるが、研究者自身における「還元」の質の担保、モデル化に伴う質の保障、より多様なリソースを用いた「還元」の深化への取組等の課題があるとした。……『美術教育学研究(大学美術教育学会誌)第49号』(pp.1〜8)より
◉ 子どもの造形的な活動の論理を保障するための教師のありように関する研究〜意味生成に係る四元モデルによる「可能性」の実現に係る「読み」の実践を通して〜(2018) 【abstract】幼小中高を通してコンピテンシーベースで構成された新学習指導要領で重視されている「何ができるようになるか」という命題をふまえ、教科目標等の文言中に再度記載されるようになった「できる」の含意を鑑み、子どもたちが展開する造形的な活動において「できる」ようになるということを「可能性」の実現の過程としてとらえ、そのきわめて論理的で重層的なありようの意味や意義について、小学校2年生で実施した「造形遊び」を対象とした意味生成に係る四元モデルによる「読み」の実践等を通して考察を試みた。この四元モデルは、実現された「可能性」を示すものであると同時に、実現されなかった・次に実現されるかもしれない数多くの「可能性」を示すものとして構想したものである。つまりそこでは、あるひとつの「できた」ことの背後には、次に「できる」かもしれない「可能性」があるということであり、その「可能性」を大切にすることこそ、図画工作科の授業における教師のかかわりの要諦ではないかと考えているのである。なおこうした四元モデルによる「読み」の実践は、筆者単独ではなく「造形遊び」という活動の場や状況をともにした教師とともに行うことで各々の身体が解れ、「還元」へと至る新しい道程が拓かれることになるのではないかと考えているため、当該の四元モデルの精緻化とともに今後の大きな課題とするとした。……『美術教育学研究(大学美術教育学会誌)第50号』(pp.17〜24)より
◉ 子どもの造形的な活動の論理を保障するための方法と態度の探究―図画工作授業キャラバンの試みを通して―(2024) 【abstract】筆者はこれまで「学校という制度の中で子どもの造形的な活動の論理と展開を保障するための方法と態度」について探究することをその研究の主眼としてきたが、本稿における「図画工作授業キャラバン(以下、図工キャラバン)」の試みとは、上記方法と態度を得るための手がかり—「『還元』を通した『臨床的=現象学的態度に基づく間主観的アプローチ』」を行うための視点—を示してくれるものとして、その有用性について考察するものである。すなわち「図工キャラバン」の試みとは、子どもひとりひとりが展開する造形的な活動の「何を」「どのように」見取れば良いのかという視点を見出すための示唆を与えてくれるもの、すなわち、図画工作の授業において学級担任に子ども理解に係る新たな視点=造形的な視点=見えていたのに見えていなかったものをとらえる視点=「意味生成」の行為の成り立ちをとらえる視点を示唆するのみならず、「造形遊び」ひいては「子どもの造形的な活動の論理」への理解を促すためのひとつの手がかりにもなり得ると考えるものなのである。本稿では、共同研究者とともに松山市立A小学校の1年生を対象に実施した第1回図工キャラバンの実践事例を取り上げ、その分析・考察を通して、心情的なものに相関しているともいえる造形的な視点(意味生成の行為の成り立ちをとらえる視点)に係る手がかりを教師自ら見出すことができたのではないかと考えられた。今後の課題としては、上記した教師自身の気づきをどのようにして継続的に自覚化していくかということがあげられ、それぞれの教師が単独で取り組むだけでなく、チーム的な取り組みもまた必要となるのではないかと結論づけた。……『愛媛大学教育学部紀要第71巻』(pp.186-198)より※ https://www.ed.ehime-u.ac.jp/~kiyou/2024/pdf/14.pdf
論文
2015年:子どもの造形的な活動の相互行為分析による臨床的研究のための基礎的考察〜小・中学校と大学研究チームの相互連携プログラムの構想のために〜
2016年:子どもの造形的な活動の相互行為分析による臨床的研究のための基礎的考察Ⅱ〜愛媛県松山市の小学校における〈造形遊び〉の授業提案,および同市内の小学校を対象とした〈造形遊び〉に関するアンケートの分析をもとに〜
2017年:子どもの造形的な活動の相互行為分析による臨床的研究のための基礎的考察Ⅲ〜「造形遊び」の授業研究等を通した「還元」に係るプロセスモデルの構築とその可能性について〜
2018年:子どもの造形的な活動の論理を保障するための教師のありように関する研究〜意味生成に係る四元モデルによる「可能性」の実現に係る「読み」の実践を通して〜
学生へのメッセージ
子どもたちは自分にとって魅力・価値のあるものを自らつくりだしています。それは私たち大人の予想を遥かに超える〝新しい世界〟ともいえるもので、いわゆる〝常識=当たり前〟を一旦脇に置いておかないと見えてこないものでもあります。
実際にものをつくったり文献を読んだり子どもたちと様々にかかわり合ったりする中で〝常識=当たり前〟を一旦脇に置き、ともに〝新しい世界〟をつくりだしてみませんか?
WORKS
white & stain
制作年:2015年
素材:石膏、鉄、スタイロフォーム
サイズ:W60×D2.5×H170(㎝)

white & stain Ⅱ
制作年:2016年
素材:石膏、鉄、スタイロフォーム
サイズ:W50×D2.5×H80(㎝)

white & stain Ⅲ
制作年:2017年
素材:石膏、鉄、スタイロフォーム
サイズ:W71×D2.5×H48(㎝)

whites & stains
制作年:2020年
素材:石膏、鉄、スタイロフォーム
サイズ:W85×D5×H55(㎝)
