愛媛大学代数セミナー

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2018年度の講演

  • 第63回 : 2019年3月11日(月) 16:30--17:30
  • 講演者 : Ade Irma Suriajaya (理化学研究所)
  • 題目 : リーマンゼータ関数の導関数の零点〜その始まりとその先へ
  • 概要 : リーマンゼータ関数の零点は自明な零点と非自明な零点に分けられ、非自明な零点の正確な位置が未だ知られていない。この非自明な零点が全て臨界線上に存在すると予想されている。この予想は、リーマンゼータ関数の一階導関数の非自明な零点の分布を用いて書き換えられることが、1935年にA. Speiser氏により示された。1970年代にリーマンゼータ関数の導関数の零点に関する研究が盛り、リーマンゼータ関数自身の零点の分布との関係もたくさん導かれてきた。この講演では、この研究の背景となるいくつかの重要な研究成果および、この話題における2015年以後の発展を紹介する。
  • 第62回 : 2019年2月22日(金) 16:30--17:30
  • 講演者 : 入江 佑樹(東北大学数理科学連携研究センター)
  • 題目 : 対称群の既約表現とp飽和マヤゲーム
  • 概要 : 表現とゲームの間の一つのつながりを紹介する. 1970年代頃, 佐藤幹夫は「対称群のフック公式」と「マヤゲームのSprague-Grundy関数(SG関数)の明示公式」の形が似ていることなどから, 両者には見かけ以上の関連があることを予想した. 本講演では対称群の既約表現の次数に関する定理を与え, この定理からp飽和マヤゲームのSG関数の明示公式が得られることを紹介する.
  • 第61回 : 2019年1月25日(金) 16:30--17:30
  • 講演者 : 坂内健一(慶應義塾大学/理化学研究所)
  • 題目 : 総実代数体に付随する代数トーラスのポリログのドラム実現について
  • 概要 : 古典的ポリログ関数は、ポリログ類と呼ばれる射影直線引く3点のある種のBeilinson-Deligneコホモロジー類の周期関数と解釈することができる。この類のドラム実現は、Riemannゼータ関数やLerchゼータ関数の特殊値の母関数を与える有理関数によって具体的に記述される。本講演では、総実代数体に付随するある種の代数トーラスに対して、総実代数体のLerch型新谷ゼータ関数の母関数を用いてある種のドラムコホモロジー類を構成する。この類は、この場合のポリログのドラム実現であることが期待されている。時間が許せば、この場合のp進ポリログについて、現在進行中の研究についても述べる。本研究は慶應義塾大学の山本修司氏、山田一紀氏、理化学研究所の萩原啓氏との共同研究である。
  • 第60回 : 2018年12月14日(金) 16:30--17:30
  • 講演者 : 渋川元樹 (神戸大学理学部)
  • 題目 : Some remarks on the Gauss sum and basic hypergeometric series
  • 概要 : 古典的なGauss和については積表示が知られている(Gauss).これはGauss積分の積表示(Wallis積)の有限体類似とみなせるが,Gaussはこの積表示を巧妙な手法で証明している.その証明を現代的に解釈し直すと, 超幾何函数の$x=\frac{1}{2}$ or$-1$での特殊値の公式(Gauss, Kummer)の$q$類似に相当する和公式(Bailey,Andrews), より一般には$q$超幾何の二次変換公式(Singh, Askey-Wilson),の特殊な場合を示していることがわかる. また直交多項式論からいえば,Gaussの結果は一変数の$q$直交多項式系であるcontinous$q$-Hermite多項式の特殊値とみなすことができる. 本講演では, 古典的なGaussの結果から出発して,それに関連した種々の$q$超幾何函数の和公式,変換公式及び$q$直交多項式系について述べる.更にこうした現代の特殊函数の観点から得られるGauss和の一般化にあたる,特殊指数和について紹介する.
  • 第59回 : 2018年11月19日(月) 16:30--17:30
  • 講演者 : 宮谷和尭(広島大学)
  • 題目 : p-進超幾何微分方程式と p-進非 Liouville 条件
  • 概要 : 本講演では,超幾何微分方程式の p-進版に関する講演者の結果を紹介する.講演の前半では,超幾何微分方程式の基本について復習しつつ,この乗法的畳み込みに関する Katz による結果を紹介する.また,その p-進版を考える上で必要となる p-進(非)Liouville 数についても紹介する.後半では,前述の Katz の結果が,p-進非 Liouville 性に関する条件の下で p-進化できるという講演者の結果を紹介し,その応用について述べる.
  • 第58回 : 2018年10月19日(金) 16:30--17:30
  • 講演者 : 中岡宏行(鹿児島大学理学部)
  • 題目 : Partial Tambara structure on the Burnside biset functor
  • 概要 : 有限群Gに付随する代数系と部分群との関係を記述する一般的な枠組みとして Mackey関手が知られているが、Mackey関手の構造をより豊富にする概念として、乗法的推移も考慮に入れた「丹原関手」、群の剰余も扱うことができる「biset関手」の二つが挙げられる.これら二つの方向性を包括すべく、biset関手論で乗法的な構造射を扱う「丹原biset 関手」の定義に向けて、Burnside biset関手の乗法的構造射のもつ性質の一部を定式化する方法を紹介したい.
  • 第57回 : 2018年9月21日(金) 16:30--17:30
  • 講演者 : 田辺顕一朗(北海道大学大学院理学研究院数学部門)
  • 題目 : 格子に付随する頂点代数の不変部分代数の表現について
  • 概要 : 頂点代数とは,物理における共形場理論の代数的定式化や,ムーンシャイン予想の解決等を目的として Borcherds によって導入された代数系である.特にムーンシャイン頂点代数を通して,共形場理論,有限群論,保型形式,リー環の表現論が結びつけられ,Borcherds 自身によってムーンシャイン予想が解決されたことは,これらの分野に大きな研究の展開を生み出した.頂点代数の基本的かつ代表的な具体例として,非退化偶格子Lに付随する頂点代数 V_L がある.格子 L の自己同型 -1 の持ち上げによって固定される V_{L} の元全体からなる部分頂点代数 V_{L}^{+} は,ムーンシャイン頂点代数の構成にも用いられており,非常に重要な対象である.頂点代数 V_{L}^{+} の表現は,L が正定値の場合にはよく分かっているが,そうでない場合には,これまでほとんど何も分かっていなかった.この講演では,L が正定値でない場合の V_{L}^{+} の表現に関する結果を紹介する.特に L が階数 1 の負定値偶格子の場合に,V_{L}^{+}の既約弱加群が分類出来たことを述べる.
  • 第56回 : 2018年8月28日(火) 16:30--17:30
  • 講演者 : 田口 雄一郎 (東京工業大学)
  • 題目 : ほどほどに大きい代数体上の Mordell-Weil群
  • 概要 : 体 K 上のアーベル多様体 A の Mordell-Weil群 A(K) は、 K が素体上有限生成な体ならば有限生成である事がよく知られてゐる(Mordell-Weil の定理)。一方、例へば K が有理数体 Q の時、A(Q^ab) は無限階数であらうと予想されてをり(Frey-Jarden の予想)、これについて幾つかの結果が知られてゐる。この場合の「無限階数」とは「tensor Q したものが無限次元」 の意味であるが、今回は「K が大き過ぎなければ A(K) や A(K)/(torsion) は可除部分群を含まない」といふ方向の結果を紹介する。(小関祥康氏との共同研究)
  • 第55回 : 2018年7月20日(金) 16:30--17:30
  • 講演者 : 広瀬稔 (九州大学大学院数理学研究院)
  • 題目 : Generalization of Zagier's 2-3-2 formula of multiple zeta values
  • 概要 : 講演タイトルのZagierの 2-3-2公式とは、多重ゼータ値 ¥zeta(2,...,2,3,2,...,2) をリーマンゼータ値の正の奇数点での値とπ冪の積の線形和で表す公式で、2012年にZagierによって証明された。今回、佐藤信夫氏との共同研究でZagierの 2-3-2公式の一般化に成功したので報告する。一般化には、P^1\{0,±1,∞}上の反復積分が用いられる。
  • 第54回 : 2018年6月29日(金) 16:30--17:30
  • 講演者 : 赤塚広隆(小樽商科大学)
  • 題目 : 約数を走る和の上極限について
  • 概要 : Ramanujanは約数の個数を数える関数d(n)に関係する様々な概念を導入し、d(n)の上極限に関する性質を調べた。また、彼は他の乗法的関数についても類似の研究を行った。しかし、1915年の論文ではd(n)に関する研究のみが出版され、他の部分は出版の段階で削除された。削除された部分については、20世紀の後半になりAndrews, Nicolas, Robinらの助けを得て公開された。
    本講演では、まず上述のRamanujanが導入した諸概念について説明する。また、約数を走る和で定まる乗法的関数の上極限に関する性質と、ゼータ関数の零点分布との関係について説明したい。
  • 第53回 : 2018年5月11日(金) 16:30--17:30
  • 講演者 : 日比孝之(大阪大学大学院情報科学研究科)
  • 題目 : 凸多面体と可換代数と統計の奏でる三重奏を聴く
  • 概要 : Box--Behnken 計画の主効果モデルと呼ばれる統計モデルを、マルコフ連鎖モンテカルロ法を使いサンプリング検証をする際、マルコフ連鎖を発祥させるマルコフ基底は、D型ルート系のトーリックイデアルの生成系と解釈できる。他方、D型ルート系に付随する格子凸多面体の正則単模三角形分割の情報から、D型ルート系のトーリックイデアルのグレブナー基底を導くことができる。一般に、グレブナー基底は生成系であるから、Box--Behnken 計画の主効果モデルのマルコフ基底が、凸多面体の三角形分割を経由し、発掘される。本講演では、以上の流れを、統計とグレブナー基底の予備知識を仮定せず、紹介する。
  • 第52回 : 2018年4月6日(金) 16:30--17:30
  • 講演者 : 富安亮子(山形大学理学部)
  • 題目 : Kaplansky予想とその応用について
  • 概要 : Kaplansky予想は、3変数正定値2次形式のペアf,gでZ上同値でないものについて、そのZ上の値全体(Z上表現)が一致するものがどのくらいあるかという問題を扱っている。講演者は、結晶学への応用をきっかけに、Kaplansky予想を具体化する計算を行った。前半は、特に数理結晶学分野のある実験データ(粉末回折パターン)が数論の応用という意味で都合の良い形をしていることを紹介する。応用の方面における講演者の研究は、結晶学・diffractionに関わる手法開発になるが、上記の計算を行った関数は結晶学のソフトウェアにも導入されており、意外と純粋数学や代数学の知識も役には立つと言える。後半は、上記の計算結果から示唆される未解決問題(中学生でも問いの理解は可能)、および主定理としてKaplansky予想に現れる無限系列の満たす性質の証明を紹介する。Kaplansky予想は2次形式のペアの同時表現の議論に帰着されるため、主定理の証明は、Bhargavaの4次環のパラメトライゼーションを用いて体の議論に帰着することで行った。