愛媛大学代数セミナー

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2020年度の講演

  • 第76回 : 2021年2月12日 (金) 16:30--17:30
  • 講演者 : 成田宏秋 (早稲田大学)
  • 題目 : Fourier Jacobi expansion for Sp(2,R)
  • 概要 : 多変数の保型形式で代表的な正則Siegel保型形式のFourier展開は、良く知られた古典的な展開の他にFourier-Jacobi展開がよく扱われる。これを、非正則実解析的保型形式に拡張するには、Siegel保型形式を実シンプレクティック群上の関数として扱い、Harish Chandraの半単純Lie群上の調和解析を基盤とする表現論的手法に基づいて研究するのが一つのアプローチであろう。
    次数2の実シンプレクティック群の非正則保型形式のFourier-Jacobi展開を与えるために平野幹氏は、博士論文で「Fourier-Jacobi型の球関数」という概念を導入し広いクラスの許容表現に対してその明示公式を与えたが、それをFourier-Jacobi展開の理論の構築に応用するアイデアとして、Jacobi形式と半整数ウェイト保型形式の間の「Eichler-Zagier対応」を表現論的に定式化ないしは一般化するのが重要なカギとなる。
    この講演では次数2のシンプレクティック群のカスプ保型形式に対する非正則なものを含めたFourier-Jacobi展開の一般理論について取り上げる。
  • 第75回 : 2021年1月22日 (金) 16:30--17:30
  • 講演者 : 佐竹翔平(熊本大学)
  • 題目 : Square-root bottleneckを超えるRIPをもつ行列の(条件付き)構成
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  • 概要 : 圧縮センシングの理論において, restricted isometry property (RIP)をもつ行列は極めて有用であることが知られている. ランダム行列は高確率でほぼ最適なRIPをもつ一方, 所与の行列のRIPを判定・保証する問題は困難である. このような状況から, 確定的に構成した行列のRIPを理論的に保証する問題が, 整数論や組合せ論などと密に関連しながら, 盛んに研究されてきた. だが, 従来の確定的構成において保証できるRIPにはsquare-root bottleneckとよばれるRIPの評価に関する技術的制約が課され, この制約のために, 確定的構成において現在保証できるRIPとランダム行列が高確率で実現するRIPの間には, 依然大きな差が存在する.
    本講演では, 有限体上の指標和に関するある予想の下で, square-root bottleneckを超えるRIPを保証する行列の新しい確定的構成をいくつか与える. さらに, これらの構成からRamsey理論的な知見が得られることなども紹介したい. 本講演の一部は, Yujie Gu氏 (九州大学)との共同研究に基づく.
  • 第74回 : 2020年12月7日 (月) 16:30--17:30
  • 講演者 : 佐藤信夫(国立台湾大学)
  • 題目 : オイラー和の合流関係式とそのGT理論への応用
  • 概要 : オイラー和は多重ゼータ値の交代和類似物で、dt/t, dt/(t-1), dt/(t+1)の0から1への反復積分である。またレベル2合流関係式とは、dt/t, dt/(t+1), dt/(t-z), dt/(t+z^2)の0からzへの反復積分が満たす微分方程式系から得られるオイラー和の関係式である。この講演では、広瀬稔氏(九州大学)との共同研究でオイラー和のQ線形空間がドリーニュ型の基底で張られることを示したので、それについて紹介する。また、レベル2合流関係式のモチビック版から得られる、グロタンディーク・タイヒミュラー理論的な帰結についても話す予定である。
  • 第73回 : 2020年11月27日 (金) 16:30--17:30
  • 講演者 : 森脇湧登(Kavli IPMU)
  • 題目 : 二次元共形場理論の変形について
  • 概要 : 共形場理論は共形対称性を持つ場の量子論である。二次元の共形場理論は数学的に厳密な例を豊富にもち、高次元の場の量子論が持つはずの構造を調べることができる。 本講演では、共形場理論を簡単に復習した後、数学的に厳密な結果である二次元の共形場理論のcurrent-current変形を紹介する。また時間の許す範囲で、カイラルな共形場理論(頂点代数)への応用についても述べたい。